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この部分は、3.4.2.1および5.5で説明した(b-1)’VIEに関連している。
「実質的支配」と「実質的支配者」の概念は、2015年の外商投資法(意見募集稿)に何度も登場した。 そこでは、「内資企業を支配する、または契約および信託を通じて内資企業の権利と利益を保有する」ことは、「外国投資」の一形態とみなされた。この「形式よりも実質を重視する」考え方が徹底される場合には、VIEを通じて参入承認の障壁を回避することは明示的に禁止される。
新法施行後の既存のVIE構造への対応については、2015年外国投資法(意見募集稿)の声明で3つの解決策が提案された。
1.契約による支配を実施する外商投資企業は、国務院の外国投資規制当局に対して、中国の投資家によって実質的に支配されていることを宣言しなければならない。契約による支配の構造は維持され、当該事業体は事業活動を継続して行うことができる。
2. 契約による支配を実施する外商投資企業は、国務院の外国投資規制当局に、中国投資家の実質支配下にあることの確認を申請しなければならない。 国務院の外国投資規制当局が中国投資家の実質的支配下にあると判断した場合には、彼らは契約による支配の構造を維持することが認められ、当該事業体は事業活動を継続して行うことができる。
3. 契約による支配を実施する外商投資企業は、国務院の外国投資規制当局に、参入承認を申請し、国務院の外国投資規制当局は、関連部門と連携して、外商投資企業の実質的支配者やその他の要因を考慮に入れて決定を行う。
ただし、契約による支配の問題、すなわちVIE構造に関する外商投資法の明確な規定はなく、外商投資企業の「実質支配」についての言及もない。
一方、(最終的には外商投資法実施条例に含まれなかったが)外商投資法実施規制(意見募集稿)(「外商投資法実施条例草案」)の第35条にはVIEに関する規定が設けられ、以下のように規定していた:
中国の自然人、法人、またはその他の組織によって中国域外で設立された完全所有の企業が中国に投資する場合、国務院の関連する所管部門の審査と承認および国務院の承認を得るのを条件に、外国からの投資参入ネガティブリストに規定された、参入特別行政措置の制限の対象とならない。
前項にいう法人またはその他の組織には、外国から投資された企業は含まれない。
上記第35条は「形式よりも実質を重視する」アプローチをとったと言えるが、後退もあった。
中国の自然人、法人またはその他の組織(外商投資企業を除く)が海外に企業を設立して投資に報いる場合、ネガティブリストには服しなくとも、「完全所有支配」と「国務院による承認」の二つの条件を満たす必要がある。
完全所有支配:上記第35条は、その適用を、海外に設立された企業のうち、中国人に完全所有支配されたものにその適用を制限し、その結果実在する多くのVIE構造の企業は基本的にその適用を受けない。これは、VIE構造企業の大部分が多かれ少なかれ外国からの資金を受けているためである。 これでは、禁止されている業界で事業を行うためにVIEを使用する外国人投資家、および国際株式市場に上場するためにVIEを使用する中国内資企業は、中国人による完全所有支配の要件を満たせなかった。
国務院による承認:上記第35条は、この例外が適用されるためには、「国務院の関連所管部門の審査と承認、および国務院の承認」が必要であると規定していた。 上記2015年外国投資法(意見募集稿)で提唱された3つの解決策のうち、2つ目が一番近いようであるが、審査・承認部門は「関連所管部門」としか規定されていないため、この要件は実際の運用に不確実性をもたらしていた可能性がある。
上記の2つの要件を満たすことが困難であるため、外商投資法実施条例草案の第35条があったら、ほとんどのVIEは、「外国投資参入ネガティブリストに規定されているような参入の特別行政措置の制限を受けない」ことの保証なしに存在するほかないところだった[1]。
外商投資法実施条例草案の第35条は、最終的には削除されて外商投資法実施条例に規定されなかった。したがって、VIEの規定は外商投資法にも外商投資法実施条例にもない。既存のVIE構造が外商投資法の実施後にどのように扱われるかは、結局未解決の問題として残されている。
投資の自由化は、VIE構造問題の解決に役立つ。多くの産業における外資参入に対する制限が徐々に廃止されるため、これらの産業は外資参入ネガティブリストから姿を消し、VIE構造を通じて参入障壁を迂回する必要性が大幅に減少し、VIE問題の多くは自然と解決されるようになるであろう。著者としては、VIE構造の必要性がなくなり、その正当性が明らかになるまで、参入承認の規制当局は、「過去のことは水に流す」態度を持つべきだと考える。
[1] (图解金融)参照