外国投資分野の差別的措置は国際法にいう「国家責任」にかかわる。2001年、国連の国際法委員会は国際違法行為に対する国家責任(国家責任条文草案)を採択した。中国政府は国家責任条文草案を非常に重視し、これに対して積極的な態度をとっている。
以下に述べる国家責任条文草案の中の対抗措置の原則(これは国際社会で公認された原則である)を考慮し、外商投資法第40条に基づいて中国政府によってとられる対抗措置は以下のように解釈されるべきである。
外商投資法第40条は、対抗措置は「実際の状況に基づき」講じることができるとしている。
国家責任条文草案第52条第1項、第2項は以下のように規定する:
1.対抗措置をとる前に、被害国は
(a)第43条に従い、第2部の義務を履行するように、責任ある国家に要請する。
(b)対抗措置をとることおよび責任ある国家との交渉の要請のいかなる決定も、責任ある国家に通知する。
2.前項(b)による通知をした場合でも、被害国はそれらの権利を守るために必要なものとして、緊急の対抗措置をとる。
これから、中国の立法上は具体的な基準はないが、対抗措置は必要な場合にのみとられるべきものであるとは言える。「必要」性のある状況かどうかは、国家が決めることになる[1]。
ここで指摘すべきは、本条に規定されている対抗措置は、軽々しく用いることはできないということである。
中国の投資協定や自由貿易協定には、投資に関する規定があり、協定の履行中に発生した紛争は、通常協議によって解決されることとされている。
例えば、投資の奨励および相互保護に関する日本国と中華人民共和国との間の協定(中国との投資保護協定)第13条第1項は以下のように定める:
各締約国は、この協定の運用に影響を及ぼす問題に関して他方の締約国の行う申入れに対し好意的な考患を払うものとし、また、当該申入れに関する協議のための適当な機会を与える。
中国との投資保護協定第13条第2項第1文は以下のように定める:
この協定の解釈または適用に関する両締約国間の紛争で外交交渉によっても満足な調整に至らなかったものは、仲裁委員会に決定のため付託する。
中国と一部の国との間の投資協定には、合同委員会や混合委員会があり、協定の履行における紛争を解決するために用いられる。
中国との投資保護協定第14条は以下のように定める:
両締約国は、この協定の実施状況および両国間の投資に関連する問題の検討を行うこと、外商投資の受入れに関するいずれか一方または双方の国の法制度または政策の進展に関連して、この協定の運用およびこれに関連する事項について協議を行うこと並びに、必要な場合には、両締約国の政府に対し適当な勧告を行うことを目的として、両締約国の政府の代表から成る合同委員会を設置する。合同委員会は、いずれか一方の締約国の要請により、東京または北京で交互に会合する。
対抗措置を講じるといっても、もちろん無制限ではない。外商投資法第40条で用いられる「対抗措置」という語は、2つの面から理解されるべきである。
第一に、必ずしも同じ措置である必要はなく、相応の措置であればよく、同じ領域においてでも、領域を跨ってでもよい[2]。
第二に、いかなる措置を取るにしても、損失に比例したものである必要があり、妥当かつ適切なものでなければならない。
これに関して、国家責任条文草案第51条は以下のように定める:
問題における国際違法行為と権利の重大さを考慮に入れ、対抗措置は受けた損害と均衡のとれたものでなければならない。
[1] (孔 他) 150参照
[2] (孔 他) 151参照