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これらの規制からは、「信用喪失」が何を意味するのかはまだ明確ではない。また、レッドリストまたはブラックリストにどのように登録されるか、つまり、どのように「スコアリング」されるかはわからない。これを理解するために、この論文では、最近の、中国の欧州連合商工会議所による中国の企業社会信用制度に関する報告書のエグゼクティブサマリーから引用する[1]。
企業社会信用システムに基づくレーティングのロジックは、次の3つのステップに従う。
A)レーティング要件の政府による定義
政府当局は、企業が優れた評価を受け、或いは不遵守の記録を回避するために、遵守する必要がある要件を定義する。
B)企業の行動の監視
政府当局は、新しいテクノロジーを使用して、企業の活動に関する情報を収集し、その行動を監視する。
C)アルゴリズムに基づく企業の評価と直接的な影響
収集されたデータは処理され、定義された要件に対して評価される。良い評価は報酬につながり、否定的なパフォーマンスには制裁を加えられる。
評価と要件:
企業社会信用システムは、トピック毎の規制レーティング(税、税関、環境保護、製品品質など)とそれと並行する一連のコンプライアンス記録(独占禁止法のケースについては、データ転送、価格設定、ライセンスなど)を通じて企業の行動を評価する。このシステムは、中国における企業のビジネスのほぼすべての側面をカバーしている。中国の多国籍企業(MNC)は、約30の異なる規制レーティングとコンプライアンスレコードの対象となっており、そのほとんどは既に実施されている。各レーティングは、一連の評価要件に基づいて計算される。総じていえば、多国籍企業はこのような約300の要件について評価されると予想される[2]。
制裁と褒賞:
あらゆる否定的な評価に対して、一連の制裁措置がすでに実施されている。ブラックリストの場合、聯合懲戒の包括的なリストが適用される。これらの制裁措置は、政府当局間の覚書(MoU)に基づいている。50以上のMoUがすでに締結されている。それらのいくつかは、良い評価結果に対する褒章についても定めるが、当面は、褒章メカニズムは制裁ほどは発展しないであろう。
制裁措置は、罰金や裁判所の命令に限定されない。それらには、より高い検査率と対象を絞った監査、政府が承認(例:土地使用権、投資承認)を与える際の条件加重、優遇政策(例:補助金と税還付)からの除外、公的調達からの排除、および公の非難と辱めが含まれる。制裁は会社の法定代表や主要な役職員個人にも及ぶ可能性さえある[3]。
2014-2020プランによると、社会信用システムの構築は2020年までに完了する予定である。しかし、それは終わりではなく、社会信用システムは引き続き改善され、信用できる(国家の定義による)と証明された企業のみが中国の市場にアクセスし、参加することができることになる。外商投資企業は注意すべし:さもなければ、それは死を意味するかもしれない。
[1] European Union Chamber of Commerce in China, The Digital Hand: How China’s Corporate Social Security System Conditions Market Actors (2019), https://www.europeanchamber.com.cn/en/publications-archive/709/The_Digital_Hand_How_China_s_Corporate_Social_Credit_System_Conditions_Market_Actors 2-3
[2] 多国籍企業が「著しく信用喪失した企業のリスト」に載ったら、ブラックリストに掲載されて間もなく懲罰が課されると思った方がよい。
(European Union Chamber of Commerce in China) 12。
「著しく信用喪失した企業のリスト」は10.4 広く知られた信用システムを参照
[3] 10.6でみた聯合懲戒