ブログ

4.3 WTO加入と(a)’実績要求の廃止

👉目次へ

WTO加盟に伴い、外商投資企業に関する多くの実績要求(3.4.1参照)が廃止された。ウェイン州立大学のJulia Ya Qin教授は、その理由を次のように説明している。

GATsを別にして、WTOには投資活動の規制はわずかにしかない。貿易に関連する投資措置に関する協定(TRIMs)に基づき、WTO加盟国は、輸出実績、ローカルコンテンツ(輸入代替)、外国為替均衡に関するものを含む、投資に課される実績要求を廃止する必要がある。これらの実績要求は、商品の取引に悪影響を与えるため禁止されている。

WTO加盟以前、中国は外商投資企業に多くのTRIMsで禁止されている種類の実績要求を課していた。議定書では、中国は加盟後、途上国のメンバーが利用できる移行期間を利用することなく、直ちにTRIMsを遵守すると約束した。注目すべきことに、中国はまた、TRIMsの対象となるものだけでなく、「技術移転」および「中国における研究開発の実施」も含め、「あらゆる種類の実績要求」について、外商投資の審査・承認の際に条件としないことを約束した。あらゆる実績要求を廃止するというこのコミットメントは、他の国は約束していない、WTO+の義務の一つである。これらのコミットメントを実行するために、中国は外商投資に関する法令を改正し、外商投資企業のすべての強制的な実績要求を廃止した[1]

補足をすると、TRIMs協定は、付属書に、GATT 1994のGATT第III条:4または第XI条:1と矛盾する措置の、例示的リストを含んでいる。

以下が、付属書:例示的リストである[2]:

1. GATT 1994の第III条第4項で規定されている国民待遇の義務と一致しないTRIMsには、国内法または行政決定に基づいて強制または執行できるもの、または便益を受けるために遵守する必要があるもので、以下を必要とするものを含む:

(a)特定の製品としてか、製品の数量または価格によってか、または製品の量または価格の観点からか、ローカル生産の量または価格の割合によって特定されているかを問わず、国内生産のまたは国内調達した製品を企業が購入または使用すること;または

(b)企業による輸入製品の購入または使用が、その輸出する現地生産の製品の数量または価格に応じた量に制限されること。

2. GATT 1994の第XI条第1項で規定されている量的制限の一般的撤廃の義務に抵触するTRIMsには、国内の法または行政判断に基づいて強制または執行できるもの、または便益を受けるために遵守する必要があるもので、以下の制限を含む:

(a)企業が現地生産に使用または関連する製品の輸入を、一般的にまたはその現地生産した製品の輸出の数量または価格に応じて、一定数量に制限すること;

(b)企業が現地生産に使用または関連する製品の輸入を、外国為替へのアクセスを当該企業が寄与した外国為替の流入に応じた金額に制約ことによって、制限すること;または

(c)製品の企業による輸出または輸出のための販売を、特定の製品としてか、製品の数量または価格によってか、または製品の量または価格の観点からか、ローカル生産の量または価格の割合によって特定されているかを問わず、制限すること。

上記の3.4.1に記載されている(a)’の実績要求は、GATT 1994のIII条:4項またはXI条1項と矛盾するものとみなされた。その結果、

(a-1)’ローカルコンテンツ要求

外資三法とその実施規則のローカルコンテンツ要求は削除された。

具体的には:

中外合弁経営企業法(第9条第2項は、第10条第1項となった)は、以下のように修正された:

合弁企業が承認された経営範囲内で必要とする原材料、燃料等の物資については、公平、合理の原則に従い、国内市場あるいは国際市場において購買することができる。

中外合弁経営企業法実施条例からは、以下の文言が削除された:「但し同様の条件のもとでは、可能な限り中国国内で購買されるべきである」

外商独資企業法(第15条)は以下のように修正された:

外商独資企業が承認された経営範囲内で必要とする原材料、燃料等の物資は、公平、合理の原則に基づいて、国内市場または国際市場において購買することができる。

(a-2)’外国為替均衡要求

外資三法およびそれらの施行規則の中の外国為替均衡要求は廃止された。

具体的には、中外合弁経営企業法実施条例第75条、外商独資企業法第18条、中外合作経営企業法第20条が削除された。

(a-3)’ 輸出実績要求

外資三法とそれらの実施規則の輸出実績要求は廃止された。

具体的には:

中外合弁経営企業法実施条例第4条が削除された。

外商独資企業法第3条第1項は以下のように修正された:

外商独資企業の設立は、中国の国民経済の発展に役立つものでなければならない。国は、製品を輸出するか、または先進的技術を有する外商独資企業の設立を奨励する。

👉3.4.1


[1] Julia Ya Qin, Trade, Investment and Beyond: The Impact of WTO Accession on China’s Legal System 275-6 (Perry Keller, 2017) Law and the Market Economy in China, Oxfordshire: Routledge

[2] WTO, Agreement on Trade-Related Investment Measures, https://www.wto.org/english/docs_e/legal_e/18-trims_e.htm

関連記事

  1. 10.7 SCSが実際にどのように作用するか
  2. 3.4 各制限策の内容
  3. 12.4 定款変更
  4. 3.4.1 (a)’ 実績要求
  5. 5.4 (f) 苦情処理暫定弁法
  6. 8.4 合法性審査と公平競争審査(外商投資法第24条)
  7. 12.3 会社法に従い調整を要する事項
  8. 3.2.6 (f) 苦情処理についての考え方
PAGE TOP