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3.4.7 (g)’ 強制技術移転

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強制技術移転は内国政府が採る政策であり、外国企業に、技術とノウハウを市場条件を大幅に下回る条件で内国のパートナーに(ときに技術移転が不可避ではない場合にも)ライセンスすることを要求するものである。

この慣行により、内資企業は、他の方法では同じコストで開発できなかったかもしれない高度な技術に簡単にアクセスできてしまう。一方、ライセンスを付与する多国籍企業は、公正な補償がなければ、技術的優位性を完全にあるいは部分的に失ってしまう。

内国企業と外国企業の間の契約上の合意内容を規定するそのような政策は、搾取的であり、WTOのような国際機関によって定められた公正取引の原則に反するものといえる[1]

強制的技術移転は、長年中国が一部の国から批判を受けて来た問題である。

中国のWTO加盟前は、米国は中国の強制技術移転の政策は明示的であるとの見方をしていた。輸出管理局戦略的産業および経済安全保障室の1999年の防衛市場調査報告は次の調査結果を発表した:

中国の投資および産業政策には、しばしば、ローカルコンテンツ要求、生産物の輸出割当や生産、研究または訓練における協力という形で、技術移転の明示的な規定が含まれている。

中国の投資政策は、「禁止」、「許可」、または「奨励」されている外商投資の種類に応じて明示されており、奨励類は先進技術に焦点を当てている。ハイテク産業の外国人投資家は、テクノロジーを移転するインセンティブとして、税金の還付や低い関税率などの優遇措置を享受するが、同時に内国の競合他社には課せられていない規制の対象となる[2]

そのような片面的な規制の例として、1988年の技術管理条例実施細則があげられている(実施細則)。報告書によると:

「実施細則」は、外資企業が中国のパートナーと合弁契約を締結する場合の条件を規定している。これらの「ルール」は、中国政府による、外国からの投資プロセスを将来の投資家にとって透明なものにするための試みであった。しかし、「ルール」の公表により、外国投資家が中国の内国投資家と比べて異なる扱いを受けることがいくつかあるのが明らかになった。

さらに報告書には以下のような表が含められていた:

中国法のもとでの内国および外国の技術の移転

 外国企業にかかる 詳細なルール内国企業にかかる 技術契約法
持分権新しく開発された技術の単独所有権は中国の企業に与えられる。外国の当事者は、外国のライセンサーが直接開発していない技術に対しては使用料を支払う必要がある。技術の所有権は関与した当事者の独占権であり、技術進歩は他のすべての当事者が「完全な利用権」を有する。
利用権外国の当事者が中国の当事者との技術移転契約において課すことを禁止されている9つの「不当な制限」のリストが含まれている。[3]何らの制限も挙げられていない。
性能保証およびフィージビリティ・スタディ外国のライセンサーは、性能保証をすることが求められる(困難な制限が多いにもかかわらず)。フィージビリティ・スタディは、契約の承認を受けるのに不可欠である。技術的性能保証やフィージビリティ・スタディは求められておらず、後者は任意である。
営業秘密の保護「契約の交渉と承認の過程で、ライセンシーたる者は、別の機密保持契約が締結されていない限り、外国技術の秘密を保持し、または使用を控える義務はない」。秘密情報が横領された場合、責任を負う可能性があるのは、従業員ではなく、企業である。技術ライセンスは通常、5〜10年後または契約の終了時に期限が切れるが、中国のパートナーは技術を自由に無制限に使用できるようになる。2種類の知的財産権保護を定めている。交渉全体と契約の承認手続(結果に関係なく)を通じての機密性。従業員または企業のいずれかが取得した秘密情報の機密性。

出典: Erin Sullivan弁護士, 「科学技術交流に関する中国の法律と政策」, 米国商務省、技術局、技術政策室の1995年7月12日付け公式覚書 

報告書の表に記載されている技術契約法[中华人民共和国技术合同法]は、中国企業間の技術移転を規律する1987年の中国の法律(すでに失効)である。

表からは、当時の米国の強制的技術移転についての主張にももっともな点があったことが伺われる。

👉4.5 6.9 8.3


[1] Mayank Batavia, Forced technology transfer and Made in China 2025: An introduction (2018), http://almostism.com/what-is-forced-technology-made-in-china-2025/

[2] Bureau of Export Administration Office of Strategic Industries and Economic Security, Defense Market Research Report (1999), https://fas.org/nuke/guide/china/doctrine/dmrr_chinatech.htm

[3] 報告書の脚注70によると、これらの制限には「技術移転先の販売ルートと輸出市場を不合理的に制限するもの」と「技術移転先が契約期間満了後に輸入技術を使用することを禁止するもの」という規定が含まれ、「国際法務貿易の慣例上は、これらの2つは差別的と見なされる。

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